酒は百薬の長といって、適度に飲むと薬の効果があるとされていますが、もちろん飲み過ぎはダメです。さて、健康診断のときは、前日にアルコールを飲んでも大丈夫なのでしょうか。また、アルコールを飲んだら検査結果にどのような影響が出るのか。健康診断とアルコールとの関係について考えることにします。
アルコール制限の理由
なかには、まったくアルコールはダメという人もいます。理由はいろいろでしょうが、体質的にアルコールを受け付けない人がいるのは確かです。ということは、アルコールが人体に大きな影響力をもっていることになります。
アルコールは、飲んだあとすぐに吸収され、血液に溶け込んで体内をめぐり、血液にも神経にも臓器にも、さまざまな影響を及ぼします。もっとも影響を及ぼされる臓器といえば肝臓です。アルコールを分解する働きをするのが肝臓だからです。ですから、飲み過ぎて肝臓に負担をかけすぎると肝機能障害を起こすことがあります。これは、前日というよりはふだんの生活の問題ですので、前日のアルコールとはそれほど関係ありません。
アルコールはまた、血液中で分解して糖分になりますので、血糖値が上昇します。血液検査でこの血糖値に影響が出ることがあります。それから、血液検査のほかに尿検査があります。アルコールは最終的には尿によって体外に排出されますから、尿酸の値が悪くなることがあります。
食後10時間以上あけた状態で健康診断を受けるのが、血液検査や尿検査で正しい数値を得るために必要なことですが、アルコールについても同じことが言えます。いや、食物よりもアルコールの方が体内に吸収される速度も速いので、前日のアルコールは必ず控えるようにしてください。
どれぐらいなら大丈夫?
アルコールは、体内に吸収されたたあと分解されて血液や尿に入っていきます。そのあと尿とともに体外に排出されます。その速度は人によって異なっています。一般的には、ヨーロッパ人に比べて日本人は、アルコール分解酵素が少ないためにこの能力が低いと言われています。
酒気帯び運転に対してわが国には厳しい罰則がありますが、ヨーロッパでも最近、厳しい罰則が設けられています。しかし、どの程度厳しいかいうと、ビール1杯くらいなら大丈夫という程度のもので、水の代わりにビールを飲んでいた人たちにとっては厳しい罰則ではありますが、ヨーロッパ人のアルコール分解酵素の力はきわめて大きいのです。それに比べると、日本人のもつアルコール分解酵素など、ゼロに等しいものなのです。
アルコールを飲むと気分がよくなって、ほんの1杯のつもりが、深酒になってしまうことがあります。ですから、健康診断のときは、車の運転とは違って罰則はないけれども、あなたの健康のバロメーターにするために、前日のアルコールは我慢してください。
飲酒してしまった!どうする?
頭では理解していても、いつもの習慣で飲んでしまったり、また、飲み会に付き合わなくてはならなかったり、飲んでしまうこともあります。飲んでも健康診断を受けるのはやめずに、担当者にそのことを報告してください。血液検査と尿検査以外に、バリウム検査、胃カメラ検査、腹部エコー検査を追加ですることがあります。アルコールによって胃壁が損傷を受けることがあるので、これらの検査を受ける場合は、アルコールを前日に飲んでは絶対ダメです。
前日のことなので、アルコールがすべて分解されて体外に排出されていたとしても、胃壁の損傷はそう簡単には修復しません。アルコールだけではなく、バリウム検査の場合、胃壁にバリウムを塗るような形になるので、水も大量に摂取してはいけません。
肝機能の検査値は変わる?
肝臓はアルコールを分解する機能をもっています。アルコールを摂取すると、肝臓が働くことになります。飲んだ量に比例して肝臓の働きが多くなるということです。ですから、アルコールを飲み過ぎると、肝臓にその分余計な負担をかけることになります。
健康診断の重要な項目に、肝機能検査がありますが、それは日頃どのくらい肝臓に負担をかけているか、その負担にあなたの肝臓はどう耐えているかを示すことになります。ですから、前日の飲酒によって肝機能の検査値が大きく変化することはありません。
飲まないで寝る方法
前日の同僚たちとの飲み会は、みんな翌日に健康診断を受けるのですから、そういう飲み会は全員で心を合わせて中止してください。
晩酌を習慣にしている人がいるかもしれません。食事のときのお酒は、その食事をよりおいしくする効果がありますが、やはり健康診断の前日ということで、食事もなるべく質素にして、晩酌はやめておきましょう。寝酒という言葉があります。ということは、寝る前にお酒を飲む習慣があるということです。飲まないと眠れないなどと言わずに、健康診断の前日は、おとなしく床についてください。
健康診断後のお酒
健康診断を受けてほっと一息。前の日に我慢していたお酒は格別においしいと思います。
前日から、アルコールはもちろん、食事も制限したことですから、一気に満腹にしたいかもしれませんが、それはダメです。痛んだ身体をやさしくいたわるような感覚で、脂っこくないもの、刺激の強くないもの、甘すぎないものにしてください。おすすめのおつまみとしては、白身魚のお刺身などいかがでしょうか。冷や奴などもいいですね。枝豆をつまんでゆったりとお酒を飲んでください。
まとめ
健康診断の前日にアルコールを飲むこと、まして暴飲暴食することは厳禁です。血液検査にも尿検査にも、前日のアルコールが影響します。バリウム検査・胃カメラ検査・腹部エコー検査の場合はもっと深刻ですから、前日のアルコールはNGです。休肝日という言葉がありますが、健康診断の前日はアルコール抜きの休肝日と心得ておくといいでしょう。