人が亡くなると、相続が発生します。現金や預貯金はその金額がはっきりしていますが、貴金属や書画骨董は専門家に鑑定してもらう必要があります。では、土地や建物はどうでしょうか。土地や建物には一定の評価額があり、これを基準にして土地や建物の売買が行われています。
土地や建物を所有していたら、固定資産税を納付しなくてはなりませんが、その税額はその土地や建物に対する評価額もとにして計算されます。土地や建物を相続したときには相続税を納めなくてはなりませんが、それはこの評価額でいいのでしょうか。相続税を納付することができないために土地や建物を売却する場合、その価格は何によって決まるのでしょうか。
土地の評価
ふつう「もの」には製造のためのコストがかかっていますら、販売するときの値段が決まっています。これが定価というものですが、実際にはスーパーなどでは定価より安い値段で売られています。独占禁止法があるために、家電などではその定価を決めることができず、希望小売価格が目安として定められています。家電量販店では、その価格より安い値段で販売されています。
原価のあるものと違って、土地の値段はどのようにして決められているのでしょうか。土地の値段は「一物四価」と言われていますが、同じ土地に4種類の値段がつけられているのです。実勢価格、公示地価、固定資産税評価額、相続税路線価というのがその4種類の「値段」です。
実勢価格とは、実際にその土地が売買されるときの価格です。売り手と買い手とがその価格で折り合いさえすえば、土地の価格は上にも下にもなります。極端なことをいえば、買い手がつかなければその土地の実勢価格はゼロということにもなります。とはいえ、実勢価格が決まるためには、その基準になる公的な土地の評価額があります。
公示地価とは法律によって定められた地価で、定期的に見直されて公的に表示されています。これが地価の基準になるのですが、ふつうは実勢価格が公示地価より高くなります。まれに、何かの理由で実勢価格が大幅に下落して、公示地価より低くなることもあります。
土地や建物を所有していると、固定資産税を納めなくてはなりませんが、この税額は所有している土地の固定資産税評価額によって決まります。市町村は毎年1月1日現在の土地や建物の所有者に対して固定資産税を課すのですが、この基準になるのが固定資産税評価額です。固定資産税評価額は、公的に定めた公示地価の70%を基準にして決定されています。
土地や建物を相続したり贈与したりするときには、その価格に応じて相続税や贈与税を納めなくてはなりませんが、その基準になるのが相続税路線価です。相続税路線価も固定資産税評価額と同じように、公的に定められた公示地価をもとに算出されます。
相続税路線価は公示価格の80%を基準にして決定されます。ですから、公示地価が同じなので、固定資産税評価額より相続税路線価が少し高くなります。
ところで、土地の価格について、価格地価評価額路線価という種類が区別されていますが、これはどういうことなのでしょうか。われわれが土地を手に入れようとしたら、その土地の実勢価格を基準にして最終的に購入価格が決定されますが、評価額や路線価というのは、いったいどういうものなのでしょうか。
土地の評価方法
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式の2通りあります。
相続税の対象となる地価は路線価方式によって決められますので、相続税路線価があるのです。では、この路線価とはどういうものなのでしょうか。「路線」というのは道路のことで、路線価とは道路に面する土地1平方メートルの評価額です。市街地の宅地はこの路線価が決められています。
国税庁は毎年7月上旬に「財産評価基準書」を出して、その年の1月1日時点の土地の価格を公表することになっています。この公示地価の8割程度が目安になって、相続税路線価が決定されます。
倍率方式とは、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて土地を評価する方法です。この倍率を評価倍率といいますが、これは国税局長が決定します。路線価が定められていない土地は、倍率方式によって評価されることになっています。
建物の評価方法
土地の評価には路線価方式と倍率方式がありますが、建物の評価方法はどうでしょうか。土地だけではなく建物にも固定資産税が課せられていますから、建物の評価額は固定資産税評価額と同額です。
マンションの場合は、マンション全体の固定資産税評価額に持ち分割合を掛けて計算します。建物が一戸建ての家屋の場合は固定資産税評価額と同額です。
固定資産税評価額とは違う
土地や建物には固定資産税が課せられていますから、必ず固定資産税評価額が定められています。しかし、相続する場合には、建物は固定資産税評価額が相続税額になりますが、土地は固定資産税評価額とは違って、相続税路線価によって相続税額が決められます。路線価が決められない場合は、倍率方式によって決定されます。
まとめ
土地や建物を相続したら、相続税を納めなくてはなりません。預貯金の場合は金額がはっきりしていますが、土地や建物の価格はどうして決めるのか、それを知っておくことは大切です。同じ土地なのに、実勢価格、公示地価、固定資産税評価額、相続税路線価という4種類の評価額がありますので、同じ土地についてそれぞれの「値段」を検討してみてください。